オタク文化は宗教に例えられる。素晴らしい作品を「神」と讃えたり、作品の舞台を実際に訪れる「聖地巡礼」をしたり、周りの人たちに知ってもらうために「布教」をしたりする。そして僕は、この「布教」が苦手だ。

もともと僕にとってあらゆる娯楽は自分個人で楽しむためのもので、だからコンテンツが続くレベルのファンが確保できてさえいれば、その母数を増やすことにそれほど興味がなかった。そういう意味での「苦手」もあるし、単純に、やり方がわからない、どこを切り取れば魅力が伝わるかわからない、そういう「不得手」という意味での「苦手」でもある。最近はAqours*1 が「多くの人に知ってもらいたい」と自ら発言しているので、前者の意味での「苦手」は薄れてきたけど、それでもやっぱり苦手意識はある。

Aqoursというのはラブライブ!シリーズの2作目に登場するグループで、基本的にはアニメ作品なんだけど、それに加えてメンバーを演じる声優さんたちが同じく「Aqours」を名乗ってライブを始めとしたリアルでの活動をしている。

で、僕は三次元Aqoursのライブに行くタイプなんだけど、そこでリーダー兼センター伊波杏樹さんがよく言うのだ。「Aqoursを、ラブライブ!サンシャイン!!を、多くの人に知ってもらいたい」と。

アニメコンテンツに明るい人ならラブライブ!の名前を聞いたことがないという人は、ファンの欲目もあるだろうけど、まあそうそういないだろう。なんせ初代の「μ's」は劇場版の興行収入がなんかとんでもないことになり、Mステに出演し、紅白にも出演し、さらには東京ドーム2days(しかも平日)を超満員で埋めて劇的なファイナルを迎えた。

僕にはこういう前提となる知識があるので、その後生まれたAqoursのリーダーが「ラブライブ!サンシャイン!!を、Aqoursを知ってほしい」と言うこと自体がもうなんというか言葉以上の意味を持って響くわけですよ。しかも彼女、サンシャイン!!のリーダーに抜擢される前の素人時代に、μ'sのコピーユニットを組んだりしてて。

けど、そこで最初の布教の話である。つまり、「同じ熱量では聞けなくね?」という問題。

僕はAqoursが生まれた直後から周りのファンの反応も含めずっと見てきているので、リーダーの言う「Aqoursを知ってほしい」とか「Aqoursってすごいんだぞ!」とかそういう言葉がぐっとくるわけだけど、布教相手って、大体において別にそれ自体に興味はないわけで。

巷には、有名アニメの最終回の最後のシーンだけを切り取って、それを見たパネラーが涙する姿を映して成り立っている番組もあるにはあるけれど、あれは布教ではないじゃないですか。賭けてもいいけどああいう番組で泣いてた人たちはその後アニメを1話から見たりしてないし、自発的にそのアニメについて調べたりしてないはず。

布教活動のゴールが自分と同じ、もしくは近い熱量のオタクを新たに作り上げることだとするならば、ああいう美味しいとこ取りのやつは完全に悪手なんだと思う。それだけで一定の満足感が与えられてしまうから。

で、「じゃあ実際布教するためにどうするの?」って話なんだけど……、どうすればいいんだろうね? それがわかれば僕は広告業界で名を残せるだろう。令和の糸井重里だ。

そういうこともあって布教活動は苦手だ。「自分の好きなものは周りもみんな好きになってくれるはず」なんて幻想を信じられる年齢でもないし。

結局こういう出会いってタイミングが重要で、同じ人間が同じコンテンツに触れるにしても、タイミングが違えば、触れるものが違えば、どハマリする可能性もスルーする可能性もあるわけで。

まあつまりこの記事で何が言いたいのかと言うと、ラブライブ!楽曲がサブスクで配信されているのでぜひ聴いてみてください! いい曲揃ってるんで! あとAqoursってすごいんでYouTubeとかで試聴動画見てください! という布教活動でした。

*1:ラブライブ!サンシャイン!!に登場するスクールアイドル。大好き。